都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「彼女いるって知って告白してきたのは、なんで?」

「都合のいい女でいいから、佐久間さんのそばにいたいんです。
それくらい好きなんです」

「ふぅん……」

「私なら佐久間さんと一緒に歩いても恥ずかしくないように頑張るので」


こいつ、もしかして仁奈に勝てると思ってる?
確かに仕事中の仁奈は化粧っ気ないし無愛想だからそう思ったかもしれない。
けど、お前より100倍いい女だわ。


「ダメなら、一度だけ抱いてください。それだけでいいから」

「いい加減しつこい」

「っ……」


カチンと来た、もう遠慮とかしてられない。
凄んだらビクッと肩を震わせて後ずさり。少し可哀想に思えたけど悪いのはお前だからな。


「迷惑なの、分かる?俺、仁奈のこと結婚したいくらい好きなわけ。他人がそこに入ってくる隙間ねーの」

「だって、だって……佐久間さんは本気の恋愛しないって……」

「昔の話ね?今かなり本気。だったら同棲しないでしょ」

「え、同棲……」


諦めきれないらしいので現実を突きつける。
すると驚いた顔をしたまま固まって、そして突然泣き出した。
あーもう、だから嫌だったんだよ。


「分かったならどっか行って。これ以上付きまとうなら上に報告するから」


そいつは涙ぐみながら「ひどいです!」と一言吐き捨てて走り出した。
はは、見事な悲劇のヒロインっぷりだこと。
とりあえず撃退できたってことでいいかな。
< 198 / 263 >

この作品をシェア

pagetop