都合のいい女になるはずが溺愛されてます
え、何この状況。
仁奈の顔がまさにそう言いたげだったから笑いそうになった。


「遠藤ちゃんを泣かせてごらん、おばちゃんたちがただじゃおかないよ!」

「そうよ、いくら顔が良くたって最後は性格なんだからね!」


それにしても仁奈、年上に好かれるよなぁ。
よく働くし気が利くもんな。大事にされるのも分かる。


「あの、仁奈が苦しそうなんで離してあげてください」

「あらやだ、ごめんね〜」


なにはともあれ仁奈が苦しそうなので助け舟を出した。
分厚いおばちゃんサンドから解放された仁奈は肩の力を抜いて息を吐く。


「ちゃんと大事にしてるから大丈夫です」

「え?」

「俺、仁奈のこと好きなので手放す気はないですよ」


怪訝な顔をしていたおばさんに言葉を変えて説明した。
すると手を取り合って「キャー!」とはしゃぐ。
おいおい、いい歳したおばさんがなにやってんの。


「相思相愛なのね、ならよかった。後はおふたりでどうぞ」


ひとりのおばさんにウインクされて事務室に2人にされた。
いや、勤務中なのにイチャつかねえけど。


「仁奈、そういうことだから指輪買いに行く手間省けた」

「え、結局付き合ってること佐久間さんが広めたんですか?」

「違うけど間接的に俺のせいかな。けど嫌な目にあったら俺か上司に遠慮せずすぐ言って」

「……はぁ」


仁奈は状況が掴めてないみたいで生返事。
ぽやんとしたアホ面がかわいいと思うあたり、俺もなかなか末期かもしれない。
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