都合のいい女になるはずが溺愛されてます
新卒ふたりは泣きべそをかきながら厳重注意を受けてさすがに大人しくなった。
普段仏みたいに優しい部長も怒ったら怖いからな。
知らずに調子乗ってざまあねえなって感じだ。


「今回のことは然るべき場所に報告させてもらう。それなりの処罰は覚悟しておきなさい」


顔を真っ青にして会議室から出ていった女二人。
あいつら自主退職しそうだな、と落ち込んだ後ろ姿をなんとなく見ていたら部長と目が合った。


「急に怒ってごめんね。実は遠藤さんから最近不可解なことが起こるって話を聞いて。
あの調子だと日常的に嫌がらされてたんじゃないかな。
でもあの子辛抱強いから君にもあんまり愚痴を言わないでしょ」

「そうですね……お心遣い感謝します」

「うん、いい子だから大事にしてあげてね」

「もちろんです」


部長、俺と仁奈が付き合ってること知ってんだ。
女癖の悪い俺と付き合ってるの知ったら反対されると思ったけど意外。


「万が一何かあったら君の立場も危ういと思ってね」

「っ、はは……今は遠藤さん一筋だから大丈夫ですよ」


やっぱ警戒してんじゃん。今のところ仁奈を裏切る気は毛頭ないけどビビったわ。
こりゃ結婚しない限り安心してはくれないだろうな。
まあお互い世話になってるから結婚式には呼ばないと。

なんて、プロポーズしてもないのに飛躍する俺の頭もなかなかおめでたいと思った。
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