都合のいい女になるはずが溺愛されてます
1ヶ月後、あの新卒ふたりは本当に自主退職しやがった。
ちょっと怒られたくらいでなんだ。
仁奈の方がよっぽど嫌な目にあったってのに。

元凶の彩乃って奴はのうのうと広報部で務め続けている。
図太いな、だからこそ仁奈に勝てるみたいなこと言ったんだろうけど。


「見せつけてやりて〜」

「何がですか?」


リビングのソファの上でぼそっと呟いたら、キッチンにいた仁奈に聞こえていた。


「広報の新卒に仁奈が化粧したところ」

「見せたら見せたで『お化粧の仕方教えてください』とか遠回しに嫌味言われますよ」

「あー、言いそう」


あいつは自分ひとりじゃ何もできねーからいっか。


「じゃあさ、早めに身を固めちゃう?」


何気なく口から出た言葉。仁奈は目を見開いてキョトンとした顔をしている。……ん?


「待って、今のプロポーズじゃねーから!あくまで早い方がいいかなって思っただけ。
本番はちゃんとムード作って言う」


勘違いされたと思って弁解したら仁奈はくすくす笑った。
その笑顔がたまらなくかわいい。

やっぱり早く俺の名字名乗ってほしいな。
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