都合のいい女になるはずが溺愛されてます
佐久間にはとりあえずソファに座ってテレビを見てもらうことにした。
私はお風呂に入る準備をしようと思ってベット下の収納から下着を取り出そうとしたら「仁奈」と後ろから声をかけられた。


「仁奈の家、なんか落ち着く」

「そうですか、どうぞくつろいでください」

「引っ越してきていい?」

「絶対イヤです。狭くなる」

「じゃあふたりで広い部屋引っ越そ」

「……」


まだ酔いが覚めないの?

いったい何人の女がこいつの思ってもない一言に騙されたんだろう。
嬉しいと思う自分が余計腹ただしい。

翻弄されてる、今の私はまさにそれだ。


「佐久間さん」

「ん?」

「何回言わせる気ですか?馴れ馴れしいです」


たまらずケンカをふっかけたけど「はは、出た」と笑われた。


「試してごめんね。仁奈は一筋縄じゃいかないか」


試すって何を?もう訳わかんない。
恋愛感情のない相手に駆け引きなんてややこしいことしたくないのに。

私は佐久間に聞こえるようにわざと大きなため息をしてバスルームに向かった。
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