都合のいい女になるはずが溺愛されてます
嘘でしょ、と凝視したらその人はふわりと笑った。
ええっ、かわいい。こんなかわいい人に接客されたらすぐリピーターになっちゃう。


「ふふっ、緊張しちゃう。初めまして、佐久間紗羅(さら)です」

「遠藤仁奈です。初めまして」


のんびりした喋り方からして温厚そう。
絶対ビンタとかしないでしょ。

本当に佐久間と姉弟?って疑うくらい穏やかだな。
まあ、私も弟たちと全然似てないからなんとも言えないけど。


「あの、これ気持ち程度ですが……お好きと聞いたので」

「わあっ、ありがとう。私ここのタルト大好きなの」


そんなことを思いながら、佐久間が教えてくれた洋菓子店で買ったタルトを差し出す。
すると弾けるような笑顔で受け取ってくれて、初対面ながら好感度が爆上がりした。

かわいいなぁ、こんなお姉ちゃんいたら楽しそう。


「どうぞ座って。コーヒーを淹れるから」

「いえ、お構いなく。仕事終わりに押しかけてしまったのに申し訳ないです」

「いいの、私がもてなしたいから。だって初めて陸から好きになった子だもんね?
話したいこといっぱいあるから長くなると思うよ〜」

「……変なことは聞くなよ」


チラッと見てきたお姉さんに、佐久間はぼそりと一言。
怖いもの知らずと思ってた佐久間も、お姉さんには頭が上がらないらしい。
意外な弱点にニヤリと笑ったら目が合ったので、知らんぷりをしておいた。
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