都合のいい女になるはずが溺愛されてます
お姉さんのおかげで佐久間の知らない一面を知れた。
嬉しくて楽しくて、かわいいラテアートとおいしいタルトを食べることができて大満足。

ああ、幸せ。口の中に広がる爽やかな甘味を噛み締めていたら、お姉さんと目が合った。


「それにしてもまさか、陸が結婚するなんて」

「姉ちゃん、それ母さんに耳にタコができるくらい聞いた」

「だってそれくらいびっくりしたってこと。
家族全員で甘やかしちゃって、小学校に上がる頃にはとんでもない女たらしになったのにまさか結婚だなんて」


佐久間……実のお姉ちゃんにとんでもない女たらしなんて呼ばれてるじゃん。
ああ、佐久間のクズ遍歴はそんな大昔に始まったのか。


「仁奈ちゃん、万が一がないことを願うけど、何かあったら私を呼んでね。
その時は……私のビンタが火を吹くから」


お姉さんの言葉に耳を疑って二度見した。
これまでの菩薩はどこに行ったかと思うほど無表情で佐久間を見つめていたから。
てか、ビンタした話本当だったんだ。
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