都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「ご機嫌とりってよりは、仁奈と仲良くなりたいと思ってる」


佐久間はテレビに視線を向けながら呟いた。
後腐れしないセフレが欲しいだけじゃない?なんてひねくれた言葉は飲み込んで別の言葉を選んだ。


「私と仲良くなりたいなら、付き合って欲しいことがあります」

「なに?」

「年甲斐もなく遊園地ではしゃぎたいです」


それは1年前に別れた元カレと成し得なかったこと。
女の扱いを知ってる佐久間となら、より楽しいんじゃないかなとふと思いついた。


「ふっ、ふふ……」


佐久間は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしたあと、顔を伏せて笑いだした。
なにそれ、バカにしてる?なんか急に恥ずかしくなってきた。


「いいね、楽しそう」


かと思えば顔を上げて眩しい笑顔を見せる。


「仁奈って突拍子もないこというよね。そこが気に入ってるけど」

「……佐久間さんが嫌がりそうなことを言ったつもりなんですが」


とっさに嘘をついたけど「遊園地ね、前向きに検討しとく」と笑われた。
< 24 / 263 >

この作品をシェア

pagetop