都合のいい女になるはずが溺愛されてます
実は半年後、6月に結婚式を挙げることになった。
ジューンブライドということで結婚式が多いシーズンだからダメ元だったけど、運よくキャンセルが出て執り行えることに。


「仁奈、招待状送る人決まった?」


その日の夜、家に帰ってきた佐久間が私に問いかけてきた。


「うん、大体は。……陸は?」


さすがに会話の中では『陸』と呼べるようになったけどやっぱりちょっと恥ずかしい。
だから心の中では佐久間と呼んでいる。


「親戚とか友達は決まったけど、職場どうしようかと思って」

「そこが一番悩みどころですよね」

「ね、今から一緒に決めない?」


スーツを脱ぎながらそう言われ「いいですよ、もう今日決めちゃいましょう」と気合を入れて返事した。


「ウチの部長呼ぶからさ、商品開発の部長はやめといていいよね」

「いえ、呼んでください」


話していくうちに、今日ボロクソ言ってきた上司の話題が出てきたから即答した。


「えー、この上司セクハラ親父じゃん。性格悪いしやめた方がいいって」

「だからこそぎゃふんと言わせてやりたいんです」

「……仁奈、あのおっさんになんか言われた?」

「言われたけど落ち込んでないから大丈夫。
でも今回ばかりは腹が立ったから、結婚式で絶対見返してやるんです!」

「ええ、仁奈ちゃんが燃えてる……」


拳をかためて決意表明したら佐久間は目をパチクリさせている。
「私頑張りますから」と意気込んだら「俺これ以上仁奈がかわいくなったら困っちゃう」と馬鹿にはせず笑ってくれた。
< 241 / 263 >

この作品をシェア

pagetop