都合のいい女になるはずが溺愛されてます
本番直前、チャペル前で腕を組んだお父さんは泣きすぎて鼻が真っ赤だ。
ちょっと笑えたおかげで私が泣かなくて済んだけど。

扉が開かれ、ヴァージンロードを入場曲に合わせてゆっくりと歩く。
親族や友達は通りかかる度に微笑ましく笑ってくれて「おめでとう」と小声で祝福してくれたけど、職場の人たちはなぜかざわついている。

「え?花嫁違う?」なんて声も聞こえた。
まさかの勘違いに笑ってしまった。

いくら佐久間がクズだろうと、会社の役員を招いておいてそれはないでしょ。
まあ、大変身できたってことで前向きに捉えておこう。

多少ざわついていたけど式は順調に終わり、披露宴に向けてお色直しをすることに。


「仁奈、見た?あのおっさんのマヌケな面」


移動中、佐久間が嬉しそうに話しかけてきた。


「俺のかわいい仁奈ちゃん見て度肝抜かれてんの。ウケる〜」

「私はそれより花嫁が違う人だと思われてることにウケました」

「マジ?それってある意味大成功じゃん。
あは、披露宴も楽しみ。じゃあまた後で」


よほど気分がいいのかスタッフさんがいるのに頬にキスをしてきた。
人がいるところでそういうことすると思ってなかったからビックリ。
結婚式効果ってすごい……。
< 244 / 263 >

この作品をシェア

pagetop