都合のいい女になるはずが溺愛されてます
お色直しは濃いブルーのドレス。
ふんだんにスワロフスキーが散りばめられていて、歩く度にキラキラ光って綺麗。

佐久間は無邪気な笑顔で喜んでくれて、嬉しくて私もニヤニヤしてしまった。
出会った時は絶対見せてくれなかったその笑顔。

関わっちゃダメだと思ってたのに、まさかその人と結婚することになるなんて。
事実は小説よりも奇なりって本当らしい。

最高の気分で披露宴が始まって、会場は大盛り上がり。
私も泣いたり笑ったらせわしない感情になりながら大いに楽しんだ。


「佐久間くん、おめでと〜」


少し落ち着いたころ、酒臭いおじさんが近づいてきた。
げっ、セクハラ親父が何しにしたの?と思った瞬間グイッと肩をつかんで無理やり肩を組んできた。

佐久間は思わず立ち上がる。私同様楽しんでいたはずだったけどさすがに見過ごせなかったらしい。

しかし私は触ってきた不快感より、上司の口が臭くて無理だった。なにこの激臭……!


「遠藤さん、化粧したら綺麗じゃないか。会社にちゃんとメイクしてこなきゃ」

「……もう遠藤じゃないです」

「あ?そっかぁ、もう人妻だもんなぁ」


ニタリと笑ったらくっさい息が直接かかって生理的な涙が込み上げてきた。
そのとたん、佐久間は冷静でいられなくなったらしく目を見開いて拳を固めた。
ダメダメ、抑えて!祝いの席で暴力沙汰なんて……。


「それセクハラだよ」


と思った瞬間、鶴の一声が佐久間の動きを止めた。
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