都合のいい女になるはずが溺愛されてます
声をかけてくれたのはお互いお世話になってる営業部の部長。
いつもの優しそうな笑顔で話しかけてくれたけど、目がちょっと怖い。


「え、やだなぁアドバイスだってアドバイス」

「本人が嫌がってるんだからそれはセクハラだよ。
最近社長からお灸据えられたの忘れた?」

「……ったく、祝いの席なのに頭硬いヤツ!」


私の肩を掴む迷惑な上司は適当に受け答えしていたけど、不意に鋭い目つきで睨まれてパッと手を離した。
そしてなにやらぶつくさ言いながら私たちが座っているテーブルから離れていった。

はぁ、やっと臭いから解放された……。


「部長、ありがとうございます……」

「いやぁ、祝いの席なのにごめんねふたりとも」


頭を下げて心からお礼をしたら、部長はいつもの菩薩顔に戻って謝ってきた。


「いえ、むしろ助かりました」

「部長、ありがとうございました。まさかあんな露骨にセクハラするなんて……」

「大丈夫だよ、あの人最近やらかしてね。
次はないって社長に脅されてるから、何かあったら遠慮なく僕に言って」


部長は少しいたずらっぽく笑ってくれたから、私たちも自然に笑顔になる。
はあ、同じ部長なのに雲泥の差だ。
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