都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「遅くなったけど結婚おめでとう。ふたりとも幸せそうでよかった。
それにしても佐久間くんが本当に一途になったとはね」

「あれ、一途になったこともしかして信じてませんでした?」

「ほんと少し疑ってたけど、今日の君を見て考えが変わったよ。
奥さんの前だとだらしない顔してたから」

「今日は特に綺麗ですから見とれてしまいますよ」

「分かるよ、いつもと違うとつい見ちゃうよね」


佐久間が部長と同じ話題で盛り上がるなんて。
奥さん一途な部長とは馬が合わないと思ってたのが嘘みたい。

部長は「今日は招いてくれてありがとう。これからもよろしくね」と最後まで優しい笑顔で接してくれた。

人格者ってああいう人のこと言うんだろうな。
ジーンと感動してその後ろ姿を眺めていたら、誰かに肩を叩かれた。
さっきのデジャヴ!?と思ったら弟の類と麗だった。


「ドレス綺麗やん、ねーちゃんに似合っとーね」

「仁奈姉なんやけん当たり前やん。そんなことより俺とも撮って」


ふたりはスマホを片手に写真を撮ってくれとせがんできた。
もちろんいいよと返事をして構えたら、さみしがり屋の佐久間が後ろから割って入ってきた。


「俺もいれて〜」

「陸さんはいいです」

「え、泣いていい?」


麗の相変わらずの塩対応にショックを受けた素振りを見せる佐久間。
すると類がニヤッと笑った。
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