都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「麗はカチ込む間もなくねーちゃんが結婚したから八つ当たりしとーと」

「うん、一悶着あると思ったのになかった」


ふてくされる麗がかわいくて思わず立ち上がってハグをした。


「大丈夫、私が麗のお姉ちゃんであることは変わらないから」

「じゃあ今度の長期休暇は俺ら優先してね」

「もれなく陸お義兄さんもついてくるけどいい〜?」

「いらないです」

「うっわ、辛辣。がぜん行くわ」


横槍を入れてきた佐久間を睨む麗だったけど「全然めげないやん」と笑ってなんだかいい雰囲気に。
披露宴は終始和やかなムードで行われ、たくさんの笑顔に囲まれて幕を閉じた。

最高の結婚式だった。胸を張って言えるようなそんな時間。

ここに至るまで紆余曲折な道のりだった。
佐久間のことだから、ひょっとしてこれからもどこかに寄り道するかもしれない。

それでも私に見せてくれる笑顔は本物で、この人なら大丈夫と根拠のない安心感をもたらしてくれる。


「……幸せ」


思いもよらず零れた本音。佐久間は「俺も幸せ」とすぐに拾い上げてくれる。
そんな他愛もない幸せがたまらなく嬉しくて、ふたりで顔を合わせて笑いあった。





fin
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