都合のいい女になるはずが溺愛されてます
廊下で課長と連絡先を交換して、次の仕事をするために備品を保管してる倉庫に行った。
すると隣の給湯室で事務のおばさんたちが大きな声で雑談をしていた。
ここ、滅多に人が来ないからってよく毎日話が尽きないな。


「最近佐久間くんよくこっち来るよね、いつ見てもカッコイイ〜」


こんな所でも佐久間の話題が出て正直うんざり。


「また誰か狙ってるんじゃない?」

「え……もしかして、私!?」

「ヤダもう、あんないい男がおばさん狙うわけないでしょ」

「あーあ、あと10年若かったらなぁ」

「ダメよ、佐久間くん女に見境がないんだから。
ほら、あの美人の白井さんでも遊ばれたのよ?可哀想だったじゃない」


気にせず仕事をしてたけど『可哀想な白井さん』の話に手が止まった。


「あー、泣いてたもんねぇ」

「でも分かる〜悪い男ほどカッコよく見えちゃうから」

「顔がいいと余計ね〜」


白井さん、泣いてたんだ。悔しかっただろうな。
あんな思わせぶりな態度取られたら勘違いするに決まってるのに『付き合うなんて言ってない』なんて言われて。

だからこそ私はみんなが言う可哀想な人、にはなりたくない。
どうかしてた、いい加減目を覚まそう。
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