都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「きつい?」


その仕草に勘違いした佐久間が頭を撫でてきた。
お風呂入ってないから触らないでって言ったばっかりじゃん。
それでも拒否できないのはだいぶ佐久間に心を許してしまった証拠だと思う。


「……熱はかる」

「はい、体温計」


ソファの前のテーブルに置いた体温計に手を伸ばしたら佐久間に渡された。
なんでもしてもらうのは性分に合わないけどとりあえず受け取って脇の下に挟んで体温を計る。

しばらくしてピピッと音が鳴って、確認したら37.9と表示されていた。


「ちょっと下がったね、シャワー浴びてくる?」

「うん」


ソファから起き上がって気がついた。
部屋の時計が12時を指している。帰ってから4時間は寝てたっぽい。
佐久間、こんな夜中に来てくれたんだ。申し訳ないと思う反面頼もしい。


「……なに?」

「フラフラするなら風呂場まで連れていこうと思って」


ソファから足を出そうとしたら佐久間が手を広げて待っている。
さすがにそこまで甘える訳にはいかないので自分の足で立ってシャワーを浴びに向かった。
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