都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「ほい、風邪引いてるからはちみつレモン。湯冷まししないように身体あっためな」


シャワーを浴びて部屋に戻ったらマグカップを手渡しされた。
クズなのに面倒みがいいとか、矛盾しすぎ。

マグカップの中にゆらめくはちみつレモンは私の心境みたい。
佐久間に絆されてしまいそうな自分の心をと一緒。

複雑な気持ちでそれを口に含んだのに「おいしい」と声が出た。


「おいしい?よかった、そしたら髪乾かすからそこ座って」


どっかに行っていた佐久間はドライヤーを片手に戻ってきた。
え、そこまでしてくれるの?
金銭を要求されてもおかしくないレベルに世話を焼いてもらってるんだけど。


「仁奈、座って」


ソファの前にスタンバイして手招く佐久間。私はマグカップを両手に持ちながら座った。
佐久間が作ってくれたはちみつレモンの香りが鼻腔をくすぐる。

ドライヤーにスイッチを入れ、丁寧に髪を乾かしてくれる。
他の女にもこんなことをしてたのかな。
そんな野暮ったいことを考えるのが佐久間に声をかけた。
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