都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「今日、なんで来たんですか?病人の世話なんてめんどくさいのに」


声をかけたらドライヤーを止めて「別に?」と言われた。


「けど、いつも見られない仁奈が見られて新鮮。
それに熱出てツッコミのキレが悪いから何言われても平気」

「……最低」

「ほら全然キレがない」


そうやって笑って、また髪を乾かし始めた佐久間はやっぱり変なやつだと思った。
見返りに何を求めてるんだろう。


「仁奈さぁ、課長に会わなかったんだ。安心した」


私の髪を最後まで乾かしてくれた佐久間はドライヤーのコードをまとめながらソファに腰を下ろした。


「予定ができたらしくて」

「また誘われたら行く?」

「行かないと思います」


テーブルに置いたはちみつレモンを手に取って飲みながら答える。
行かないと答えたら「そっか」と嬉しそうな声が聞こえた。
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