都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「課長ね、奥さんに不倫がバレたんだって」

「……不倫?」

「だから言ったじゃん。あの人いい噂聞かないって。まあ今回バレたのは自業自得だけど」

「そうだったんですね」

「仁奈、悪い男に捕まらなくてよかったね」


いや、なに言ってんの?
どんでもないブーメラン発言じゃん。
私は佐久間も十分悪い男だと思う。

普通だったら女性にビンタなんてされない。


「結婚してなけりゃいくら遊んでもいいのにね。
不倫は馬鹿だわ」

「佐久間さんだってそんなに女の子泣かせてたらバチが当たりますよ」

「どんなバチ?好きな子に振り向いてもらえないとか?
俺に限ってそんなことない」

「自己肯定感強いと人生楽しそうですね」

「はぁ?遠回しにバカにしてる?」


はちみつレモンをちびちび飲みながら「してないです」と首を横に振ったら佐久間にマグカップを取られた。

え、怒らせた?


「かわいい」


と思ったら違った。顔を近づけてきて頬に手を添えられる。
火照った身体には少し冷たい手がちょうどいい。

気持ちよくて振り払わないでいたら突然距離を詰められた。
キスする気!?とっさに目をつぶって顔を背けた。


「は?なんで逃げんの」

「私、風邪ひいてますけど」

「いいよ別に。うつった方がむしろ都合がいい」


都合がいいってどういうこと?
その疑問を声に出す前に佐久間に無理やり口を塞がれた。
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