都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「……かわいい」


昨夜は虚しいと確かに思った。
でも佐久間の油断しきった寝顔を見つめて優越感に浸る私も大概だ。

佐久間の寝顔は実年齢よりずいぶん幼く見える。
にしても三十路のくせに全然毛穴開いてなくない?


「腹立つ」

「んん……おはよ」


ボソッと呟いたらまぶたが開いた。
やば、聞こえた?


「さ、佐久間さん。昨日はありがとうございました。もう大丈夫そうです」

「熱何度?」

「37度5分です」

「まだ熱あるじゃん。雑炊でも作るから寝てて」

「え、大丈夫です。だいぶ身体が軽いので」


佐久間は目をこすりながら布団をひっぺがした。
程よく筋肉のついた上裸が顕になる。
そうだ、こいつ寝る時パンイチ派だった。

急に恥ずかしくなって固まってしまった。


「いいよ、俺どうせ土日仁奈の家泊まるつもりだったし」

「でも、ヒマじゃないです?」

「気使わなくていいから寝てろ」

「はい」


しかしちょっと険しい顔でベットを指さされたのでベットに戻る。
布団にもぐりながら私はちょっと嬉しかった。
他の女より私を優先してくれた気がして。

二転三転する自分の心。この名前のない関係について考えているうちに眠気に負けて意識を手放した。
< 45 / 263 >

この作品をシェア

pagetop