都合のいい女になるはずが溺愛されてます
部長の効果は絶大だった。


「遠藤さんお茶買ってきて、来客用のお茶っ葉切れちゃった」

「ストックが棚の1番上にあります」

「え、ああ……ほんとだ」


何度教えても茶葉の場所を覚えられない社員に嫌な顔せずに済んだ。


「遠藤さん、生け花ってできる?明日来客あるから玄関かわいくしておきたくて〜」

「今やってます」

「あらほんとだ!うーん、でもちょっと地味じゃない?もっと派手な色の方がかわいいかも」

「……分かりました、追加の花を買ってきますね」


社内の美化にうるさいお局様にも反発せず対応できた。

私、遠藤仁奈はこの会社に総務として勤めて3年目だ。
歳は25、愛想が悪いので貰い手はなく気ままな独身。

だから佐久間に興味を持たれるなんてこれっぽっちも思ってなかった。

佐久間陸は5年目で優秀な営業成績を収めるエリート。
世渡り上手で人望が厚く、さらにルックスの良さから女性にモテモテときた。

単純な話、住む世界が違う。

だから噂通りのクズっぷりに人間らしいところもあるんだと安心した。
今朝受付嬢にビンタされたのは痴情のもつれってやつだろう。
できることならもう関わりたくない。
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