都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「ていうか、早くシャワー浴びて来てください」

「寒いからやだ」

「シーツも洗いたいので早く出てください」

「あー、誰かさんのせいでビチャビチャになったから?」

「誰かさんが熱があるのに手加減してくれなかったからです」

「はあ?なんだよその言い方、俺の下でよがってたくせに。
なんならここで再現する?」


顔を近づけてからかってきたから、唇をとがらせて恥ずかしさを紛らわせた。
ほんと気を抜くと骨抜きにされそうだ。


「いい加減にしないと怒ります」

「冗談って、俺もう無理。腰やられる」

「もう若くないですもんね」

「あはは、辛辣」


佐久間は笑いながら上体を起こし、腕を伸ばして背伸びをした。


「仁奈といると楽しいや」


不意にヘラ、と笑われて言葉が出なかった。
佐久間にとっては何気ない褒め言葉なんだろうけど、私には特別なものに思えたから。


「じゃあシャワー借りる」

「せめて前隠してください、堂々としすぎです」

「えー、今更?」


笑う佐久間の横顔が今日はすごく魅力的に感じる。
……もしかして本当に惹かれてる?
それを信じたくなくて「じゃあ早く行ってください」と風呂場に追い出した。
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