都合のいい女になるはずが溺愛されてます
いや、そういう意味で言ったんじゃない。
女遊びをやめろという意味で落ち着けと言ったのに。


「な、なしです。何言ってるんですか」

「その割にすげー動揺してるから可能性アリってことでいい?」

「無しですって言ったじゃないですか!」

「必死になっちゃってかわいい」


ダメだ、感情的に反論したら奴の思うつぼだ。


「あまりふざけるなら追い出しますよ」

「へえ、先週付きっきりで面倒見た俺を追い出すんだ。へぇ〜」

「……」

「てか、ふざけてねえけど」


ふと真剣な眼差しを向けられてドキッとしてしまう。
でも、今はそう思っててもいつか飽きて違う女のところに行くんでしょ?
私なんてその他大勢のひとりに過ぎないくせに。


「ま、仁奈は熱出た時じゃないと素直になれないから仕方ないか」


いやらしく笑ってたしなめてくる佐久間。

狙った表情でもコロコロ変えられると心臓に悪い。
ただでさえイケメンなのに刺激が強過ぎる。


「にしても、この前の仁奈はかわいかった。あれは今思い出しても抜ける」

「最っ低です」

「なんで、褒めてんのに」


でもこういうところが佐久間だなと実感して変に緊張しなくて済む。
でもある程度仲良くならないと見えない部分でもあるから、対等に扱ってくれてるみたいで嬉しい。

「ツッコミのキレ戻ったから傷つくわ〜」と嘆く佐久間がなんだか微笑ましくて笑ってしまった。
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