都合のいい女になるはずが溺愛されてます
ふと、窓ガラスに映る私と佐久間の姿に気になった。
スーツを着た美形の男と、その隣に立つひっつめ髪の冴えない女。
どう考えても今の私じゃ釣り合わない。
うん、万が一何かあるかもなんて自意識過剰だな。


「いいですよ、今日は予定ないので」


へら、と笑って返事すると佐久間はまさかOKされると思ってなかったのか目を見開いた。
なにそれ、冷やかしならわざわざ引き止めてまで聞いて来ないでよ。


「今日、勤務何時まで?」

「18時です」

「俺19時には終わると思うから先に店に行ってもらっていい?
駅の近くの『風林』って店。俺の名前で予約してるから先に飲んでていいよ」


それだけ言って部屋を出た佐久間。
ふぅん、連絡先すら交換しないってことは完全に脈ナシ?
まあクズに脈なんてあってたまるかって感じだけど。

……でもなんか、腹立ってきた。
ぎゃふんと言わせたいからちゃんと髪をセットしてしっかりメイクして行こうかな。
女として意識はされたくないけど人間として舐められたくないから。
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