都合のいい女になるはずが溺愛されてます
手を繋ぎながら館内に入るのはなんだか変な気分だった。
おかしいな、これ以上のスキンシップしてるのにすごく恥ずかしい。


「ショーまで時間あるから先に違うところ回る?」

「何時からですか?」

「13時からって」

「じゃあ先にラッコ見に行きます?」

「そうしよっか」


平気なフリをしてるけど、頭の中は『手汗がバレませんように』でいっぱいだった。
すると佐久間は急に立ち止まって顔を覗き込んできた。


「なんかよそよそしくない?」

「そんなことないです」

「あ、手繋いでるから?」

「違います」

「ふーん」


生返事をして一旦手をゆるめた佐久間は指を絡めてきた。
俗にいう恋人繋ぎってやつ。普通の繋ぎ方より接する面積が増えるから勘弁して欲しい。


「やっぱりずるいよね」

「なにが、ですか」

「ただ強がってるのにかわいいのはずるい」


こいつ、確信犯だ。
そうやって私の反応を見て楽しんでるんだ。


「もう手繋ぐのやめます」

「嫌だ。はぐれたら面倒だから慣れて」


手を離そうとしたら佐久間に拒否された。
その後すぐに「こういう時じゃないと手繋いでくれないから許して」と笑いかけられて何も言えなかった。
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