都合のいい女になるはずが溺愛されてます
ラッコのコーナーに着いたら、佐久間はラッコと私に視線を行き来させた。
絶対ろくなこと考えてないな。


「仁奈の寝顔ラッコに似てるよ」

「どうでもいい情報ありがとうございます」

「拗ねんなって。かわいいって意味だから」


別に拗ねてないけどへそ曲がりなことしか言えない。
でも佐久間は楽しそうに笑って。
意地っぱりで可愛げがないのによく飽きもせずからかってくるよなと思った。

ラッコの展示コーナーからしばらく順路通りに回っていたらショーの15分前になったから移動することに。


「だいぶ慣れてきた?」

「ん?」

「手、繋いでるの」


忘れた頃に聞いてくるから固まってしまった。


「そういうこと言われたら意識するからやめてください。ほんといじわる」

「俺も仁奈に『いじわる』って言われると妙に興奮するからやめてくれない?」

「は?気持ち悪いです」

「条件反射だから仕方ない」


気持ち悪いと面と向かって言っても佐久間は全然めげない。
……佐久間も私の手厳しい一言に慣れてきたな。
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