ペルソナ



「もう嫌……」




可愛らしい家具で揃えられた一室。
此処で私達は幸せに暮らすはずだった。
他の人からは私達の関係は異質かもしれない。
誰も認めてくれないかもしれない。
でも、私達は愛し合っている。






「あの男さえいなければ……」






そう、あの男さえいなければ私達は――。





そう思わない日がなかった。
そんな時に届いた小包。
何か頼んだ覚えもないし、伝票に差出人の名前がない。
でも、受取人は私達になっている。
不気味に思いながらも開けれてみれば、小瓶と一通の手紙。





「poison……毒?」





「《色欲と嫉妬》……?何これ?差出人は……《ペルソナ》?」






意味が分からなかった。
でも、届いたのは毒。
あの男が消えれば良い、あの男を殺したいと願った直後にそれは届いた。
誰かが促してくれてるみたいだった。




あの男を殺せ、と。






「ねぇ、これ使ってあの男を殺そう?」






「え!でも、そんなことしたら……」





「でも、あの男がいたら、私達は幸せになれない。私はあんな奴と結婚した貴方を見たくない」






「……分かった。やろう」





私達は手を取り合う。
小瓶に入っているのが何の毒かは分からない。
でも、使うしかない。
あの男は私達にとって害でしかない。





私達はあの男を殺すと決めた。
そんな時、あの男は連絡を寄越した。
今夜三人で婚約のお祝いをしよう、と。
呑気なものだ。
そのお祝いの席で殺されるというのに。





誰も私達を認めてくれない。
でも、私達はあの男を認めない。
私達はあの男との結婚を認めないし、お祝いなんてしない。
あんな男、いなくなれば良い。





いなくなれば、私達は……私達は幸せになれる――。



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