幸福音
「瀬川くんの演奏を動画に納めたら、弟は毎晩のよう聴いているの」
「……」
「自分で歌詞を考えて歌っているんだよ」
名前のない、俺が即興で弾いた曲に?
自分でもどんな曲を弾いたか覚えていないのに?
そんな曲を毎晩聴いてくれている。
その事実が、胸に突き刺さった。
「もう一度、弟に聞かせてあげたいの。瀬川くんの演奏を」
そういう椎名の瞳からは、大きな涙がこぼれていた。
一生のお願い。
椎名なら言いそうな言葉が思い浮かんだ。
俺は立ち上がり、床に放り投げた鞄を手に取った。
「……考えさせて」
俺はその言葉だけを残して、音楽室をあとにした。
「……」
「自分で歌詞を考えて歌っているんだよ」
名前のない、俺が即興で弾いた曲に?
自分でもどんな曲を弾いたか覚えていないのに?
そんな曲を毎晩聴いてくれている。
その事実が、胸に突き刺さった。
「もう一度、弟に聞かせてあげたいの。瀬川くんの演奏を」
そういう椎名の瞳からは、大きな涙がこぼれていた。
一生のお願い。
椎名なら言いそうな言葉が思い浮かんだ。
俺は立ち上がり、床に放り投げた鞄を手に取った。
「……考えさせて」
俺はその言葉だけを残して、音楽室をあとにした。