幸福音
「椎名!」

「……瀬川くん!?」

「話はあとでいい。まず、お前の家に案内しろ」

「はぁっ!?」



椎名はぽかんと口をあけている。

口をあけている時間はない。



「なんでよ、」



そう呟いた椎名の目には涙が溜まっていた。

涙が溜まっている目で、俺を睨んでいる。



「あの日から、ずっと学校休んで……。なにやっていたのよ!?」



校門付近で涙する椎名。

そんな椎名の腕を掴む俺。


ギャラリーがざわつき始める。



「喋っちゃいけないことだったのかな、とか。引かれたかな、って、私不安で……」



椎名はあいている片方の手で、こぼれる涙を拭う。



「1週間、何してたのよ!?」

「お前の弟に聴かせるんだろ!?」



俺は椎名から手を離し、肩にかけていた鞄から紙を取り出す。

その紙を思い切り、椎名に押し付けた。

椎名は紙を受け取ると、目を見開いた。
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