幸福音
「オリジナルの曲がいいな!」



……は?

オリジナル曲?


そんなの弾いたって、歌詞がないんだから歌えるわけ……。


呆れる俺に、椎名は近寄ってくる。



「じゃあ、さっきの曲をもう1回弾いて!」

「……いや、あれは」

「それに合わせて歌うから!」



合わせるって……。

思いつきで引いたような曲だし。

弾けないことはないけれど……。


まあ、これを弾いて椎名が諦めてくれれば、それはそれでいいか。



「分かった。1回だけだからな」

「うんっ!」



俺は鍵盤に手を置き、先ほど奏でたメロディを再び思い浮かべる。


大丈夫。

弾ける。


俺は先ほどと同じように、メロディを奏で始めた。

ちらりと椎名に目をやると、あいつは目をつむっている。


……歌う気、あるのか?


まあ、いい。

俺は弾くだけ弾けばいいんだから。
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