「あんたじゃない、とは言ってないからね」
「おめでとうございます。十週目に入ったところてすね」
めでたい、のか?
にっこりと笑いながら、声高々にそう告げる医師の言葉を聞きながら、「……はぁ、」と気の抜けた返事を繰り返し吐き出した。
色々と何かを言われた気がするけれど、全く覚えていない。そのあと市役所でも「おめでとうございます」の言葉と共に母子手帳をもらったけれど、やはり、疑問符は頭から離れない。
バスから降りて、家までの帰り道の途中にある公園のベンチに腰をおろして、ひと休み。平日の十四時過ぎだからか、人はいない。
めでたい、のか?
また同じ疑問が頭に浮かぶ。だってこの子は、今、お腹にいるこの子は、私以外の誰からも祝福されないし、愛されない子なのに。
めでたい、か?
疑問符をまた新たに浮かべて、バックから母子手帳を取り出す。
「……名前、何にしよう、」
表紙に視線を落とし、独りごちた。