身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています
「婚儀ですが……」

私の心中に全く気が付かないのか、イアンは淡々と説明を続ける。それを私は、冷めた目で見つめる。内容なんて、ちっとも入ってこない。


「聞いていますか?」

「あっ、ごめんなさい。もう一度話してください」

「はあ……」

心底迷惑そうなため息を吐かれてしまう。

「さや香様、いいですか?今のあなたの振る舞いは、そのままソフィア様につながるのです。しっかりしてくださいね」

なにそれ。
脅されて、勝手に連れてこられただけの私が、なんでそこまで求められないといけないの?私、何度も無理だって言ったよ?

この先の保証があったからこそ、ここまで従ってきたけれど、先が見えなくなった今、素直に頷けそうにもない。

この人達にとって、私の存在は身代わりでしかないんだ。

それじゃあ、月森さや香はどうすればいいの?どこでなら自分でいられるの?




この世界で、唯一私の居場所をくれたのは……エディだけだ。









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