身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています
「ダーラ、今日もランチは一人で過ごすわ」

ダーラと別れ、レスターと共に向かったのは、いつもエディと過ごしている芝生の広場。この複雑に入り組んだ城内も、芝生の広場までの道のりだけは、すっかり覚えた。ここだけは、一人でも迷わずにたどり着ける。寝室に次いで、私が気を休められる場所だ。


いつものようにシートを敷いて、その上に腰を下ろす。本来なら、侍女のダーラがしてくれることだけど、サンザラ側にもなにか不足の事態が起こったのか、落ち着かない様子だった。ダーラもイアン達と話があるだろうと、あえて1人にしてもらったというのが本当のところだ。


エディはいないけれど、ユキ達に会えば少しは気持ちも上向きになるかもしれない。

そっと目を閉じて鼻歌を歌っていると、しばらくしていろいろな気配を感じはじめた。


『サーヤ』

「ユキ!!」

『大丈夫?』

「うんって言いたいところだけど……今はそうでもないかも」

心なしか、ユキ達もどこか元気がなさそうだ。
数曲口ずさみながら、エディの不在を悲しむ気持ちを共有する。不安な気持ちがなくなるわけじゃないけれど、同じ気持ちでいる同士がいると思えば、少しだけ勇気付けられる。



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