身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています
「え……」


ユキ達に遅れないよう、息も絶え絶えになりながら、全力で追いかけた。そうしてたどり着いた先には、血を流して横たわる、大きな狼がいた。

その周りを動物達が囲んで、心配そうな目を向けている。


「大丈夫?」

思わず駆け寄るとら狼は苦しそうな呻き声をあげた。触れていいのかどうか迷いつつ、それでもそっとその顔に手を添えた。

途端に、閉じていた瞼がパッと開いて、エメラルドの瞳が私の姿を捉えた。


瞳に力がこもっていたのは一瞬のことで、傷がひどいのか、苦しそうに歪み、再び瞼を閉じてしまった。


どうしたらいいの?
誰かに知らせた方が……


「今、人を呼んでくるわ」

城へもどろうとして、ハッとした。

レスターは?
見渡しても、彼の姿は見当たらない。

ランチの時、私が歌い出すと彼は必ずといっていいほど、目を閉じてしまっていた。それを咎めたことは特になかったけど……おそらく、今日もそうなのだろう。私が移動した事に気が付いていないかもしれない。

じゃあ、やっぱり私が呼びに行かないと……








< 151 / 235 >

この作品をシェア

pagetop