身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています
『待って、サーヤ』

「ユキ、こんな時になにを言ってるの?助けを呼ばないと」

『待って。サーヤ、歌ってよ』

そんなことをしている暇があるのなら、人を呼ぶべきだってわかっているのに、ユキにじっと見つめられると、判断ができなくなってしまう。

なにか確信があったわけじゃない。けれど、狼の傍に膝をついて、その漆黒の毛に触れながら、とっさに思い浮かんだ〝アメイジング・グレイス〟を歌い出した。

狼は一度ブルリと体を震わすと、ふっと体の力を抜いて、大きな頭を私に預けてきた。
















< 152 / 235 >

この作品をシェア

pagetop