身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています
王女様のために涙を流すダーラを、なんの感情もこもらない目で見つめた。

私と全く同じ外見をしたソフィア様。
でも、手にしているものは全く違う。なにも持たない私に対して、なんでも手にできる王女様。それ故に、今回のような事件に巻き込まれたことは、可哀相だったと思うけど……


私が今身に付けているドレスも、アクセサリーも、本来ならば全てソフィア様のもの。本当に私のものなんて、一つもない。

私の手伝いをしてくれるダーラだって、本来ならソフィア様の侍女。本物の王女様を迎えたら、私のことなんて見向きもしないだろう。


それから……

イリアム王国の第二王、エドワードも。
彼は、本物のソフィア様を前にした時、私のことも少しは気にしてくれるだろうか?

ううん。
そんなこと、考えたらいけない。望んじゃいけない。
彼は、ソフィア様の結婚相手であって、私の相手ではないのだから。
彼を恋しいと思う気持ちは、隠し通さないといけないものだ。


「すみません。少し、体調が優れないので、休ませてください」

王女様の知らせに歓喜する2人の様子に耐えきれなくて、逃げるようにして寝室へ入った。いくらダーラ達だって、ここへ勝手に入ることは許されない。

この城で……この世界で唯一、一人になれる場所。月森さや香でいることを、唯一許してくれる場所。






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