身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています
「月森、今週末はまた慰問か?」

「あっ、はい。そうです。ひまわりと、小児科に行ってきます」

ひまわりとは、入居型の老人ホームのことで、小児科は、子ども達が入院している病棟の方のことだ。


少しでも多く人前で歌う機会がほしくて、休みの日は慰問活動をしている。もちろん、本格的なオペラなんかじゃなくて、手遊び歌だったり、童謡だったりなんだけど。これが意外と楽しいし、たくさんの笑顔に触れられて、やりがいがあるのだ。


「そうなんだよなあ……」

なにが?
金城先生は、圧倒的に言葉が足りない気がする。
話に脈絡がなさすぎて、時になんと答えてよいのかわからなくなる。


「月森の声はさあ、大ホールでも通用する。かと思えば、ちょっと隣で、自分のためだけに歌って欲しくなる声でもあるんだよなあ」

「はあ……」

褒められてるってことでいいのか?

「癒し?慰め?元気付けっていうのか……うーん、聴いている方は、その時に欲しいもんがもらえた気になるんだよなあ、月森の声は」

恩師の言っていることが、いまいち掴みきれないけれど、褒められてるので間違いなさそうだ。


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