身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています
「お初にお目にかかります。サンザラ王国から参りました、フローレス・オブ・ソフィアと申します」

少しでも難しい言葉を減らしたこのセリフ。なにより、名前を間違えなかっただけでも、私としては合格だ。

「サンザラからの長旅、ご苦労であった」

力関係は、圧倒的にイリアムが上。イアン達の説明を聞く限り、結婚してもらえるだけ儲けものといったところか。
力の差がありすぎるのなら、イリアムがサンザラを力で取り込んでしまってもおかしくないんじゃないかって、密かに思ってるんだけど……

でも、目の前の豪華な椅子に座るエリオット陛下は、上から見下すような雰囲気は一切ない。それどころか、友好的とも思える視線を向けられている。


若き国王エリオットは、優しい眼差しをした人物だった。光の当たり具合によっては、白に見える美しい金色の髪に、鮮やかなグリーンの瞳の持ち主だ。口元は綺麗なカーブを描き、終始笑みを浮かべている。
万人受けするような整った容姿に浮かべられた、人懐っこさすら感じてしまうような笑みに、一瞬ホッとしかかった。けれど、イアンの言葉を思い出して、グッと気を引き締め治す。



< 49 / 235 >

この作品をシェア

pagetop