身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています
「おまえ、変なやつだな」

ムッとしたものの、言い返すのはやめておいた。余計なことを言って困ったことになるっていうのは、この数分で学習済みだ。

「俺に目をかけてもらえるならって、媚を売ってくるやつは山ほどいたが……全力で拒否するとか」

おかしそうに笑うエドワードは、なんだか素の彼に見える。さっきまでの不機嫌さも、魔王仕様の雰囲気もない。あまりにも自然体に見えて、声を上げて笑い続ける彼から、なぜか目が離せないでいた。

「あ、あたりまえじゃないですか!!」

この人は、噂と違ってかなり遊んでいるのか?おまけに、すっごい自意識過剰じゃない?

まあ、この容姿で地位もあるんだから、過剰ではないのかもしれないけど。


「イアンやダーラに、あなたは女性嫌いだからって聞いて、安心してたのに……」

思わず小声で呟いた悪態は、しっかり拾われたようで……

「まだ言うか」

地獄耳すぎる、なんて思う間もないまま、再び乱雑に唇を塞がれてしまう。

「んん……」

噛み付くようなキスに、驚きと恐怖から涙が滲んでくる。
エドワードはパッと体を離すと、ペロリと自身の唇を舐めた。その艶かしさに、状況も忘れて見惚れそうになってしまう。


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