身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています
「秘密を知っている者は、少なければ少ない方がいい。それに、俺とサンザラの者の間で板挟みになるのはサーヤだ。上手くいってるとでも言い続けておけばいい。
この部屋にいる時ぐらい、肩の力を抜いてろ」

正直、そんなふうに気遣われるなんて思ってなかった。この人は、やっぱり優しい。

「ありがとう」

エディの心遣いが嬉しくて、思わず笑みが溢れると、彼も同じように小さく笑みを返してくれた。そこには、〝同士〟とでもいうのか、確かなつながりが生まれたのを感じた。


ただ……


「仲睦まじいさを演じるには、寝室を共にすることだけは譲れない」

「え!?」

「どうせ、女っ気もなく、結婚する意思を少しも見せない俺への嫌がらせだろう。観念しろって言いたいがために、宰相あたりが仕組んだんだろうな」

〝あいつは、俺の事情なんておかまいなしだ〟なんて、エディはぶつくさ言ってるけれど、そんなあ……


「ここで別室で夜を過ごせば、侍女達によってすぐ様報告がいくはずだ。そんなことになれば、さらに夫婦の時間を持つように強要され……逃げられないことになるぞ」

「逃げられないこと……というと?」



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