きみへの愛の届け方
―――秋。
冬に差し掛かる頃。季節の変わり目を匂いで感じる。
風は少し寒いけれど、秋晴れの日差しが背中をじんわりとあたためてくれる。
その中を私は自転車で突き抜ける。
高校に着くまでの約20分間に自転車で思い出すことは
今日の英単語テストの範囲と夏に別れた慧のこと。
隣のクラスの慧に一目惚れをされて、流れで一緒に2、3回遊びに行って、
妥協で付き合ったけれど、付き合っていくうちに納得いかないことが増えて、
私からフッてしまった。
今考えてみれば、とても酷いことをしてしまったと思う。
友達から聞いた噂では、慧は私に聞かせる為にギターを練習してるらしい。
それについて全く興味がなかったし、
そんなことされても困る。
慧は顔も悪くないし、
相手に話を合わせてくれる、いわゆる「いい奴」。
でも、何かが違う…。
そんな想いをハッキリと言葉にできずに、
ただ別れを告げてしまった自分に嫌気がさした。
彼にその日に言われた言葉は、
「わかった」の一言。
その言葉の裏には
どんなにたくさんの感情が渦巻いていたことだろう。
絶望、悲壮、後悔、憎悪…。