今さら本物の聖女といわれてももう遅い!妹に全てを奪われたので、隣国で自由に生きます
私は畳み掛けるように言った。

「それと、お言葉ですがいじめというなら私の方が遥かに酷いんじゃありませんの?家庭内虐待に、暴力。婚約者からはまるで遊び道具のように扱われる日々。あらあら、こうやって並び立てると悲惨ですわね、私。どうやって償って貰おうかしら?」

そこで、そこで、だ。ようやく王太子は私が怒っているということに気がついたようだった。バカね、遅いのよ。全て。

ミレーヌは王太子の服の裾を強く握りしめながらも私を見てきた。その瞳は変わらず輝いている。強い、こんな状況になってまで演じ続けるその胆力は見直してあげてもいい。最も、もちろん褒めているつもりは無いのだけど。

「私………!私、お姉様がそんな目にあってるなんて………知りませんでした………!知ってたら、知ってたら私………」

「なあに?知ってたらあなたが助けてくれたとでも言うの?ちょっと、安い三文芝居でもそんなセリフ言わないわよ。知ってる?ミレーヌ、寝言は寝て言うものなのよ?」

思わず笑いを禁じ得ない。そもそもお前は私がこうなっていることを知っていたじゃないの。同じ家で暮らしていて知らなかった、はありえないだろう。知っていて見て見ぬふりをしていた。それが全てだ。そして、彼女はそれを良しとしていた。ミレーヌは自分の生まれにコンプレックスがあるようだった。

王太子と婚約できないのも自分が妾腹の娘だからか、と言っていたのを聞いたことがある。多方、本妻の娘である私が虐げられたいるのを見て溜飲を下げていたのだろう。その根性悪は凄まじい。

「ひどい、酷いわ………お姉様………」

「ミレーヌ………。黙って聞いていれば、お前は!」

「ですから、その安っぽい茶番はもう結構だとお伝えしましたの。お分かり?殿下とその娘は同じことを何度も言われないと伝わらないの?それともくだらない茶番劇に心酔することで頭がいっぱいなのかしら。だとしら、それは後でにして欲しいわね。どうせ、時間なら腐るほどあるのだから」

あなた達にとってはね、と心の中で付け加える。私に一刀両断された王太子は口が塞がないようだった。こんなの畳み掛けるように話されたのは初めてだったのだろう。今までの私といえば主に受け身で、自分から話すことなどほとんど無かった。
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