今さら本物の聖女といわれてももう遅い!妹に全てを奪われたので、隣国で自由に生きます
「地味な女とは、また随分と酷い言葉ですわ。殿下。少なくとも婚約者相手にいうセリフではありませんわね」

「婚約者だと?笑わせるな。俺はお前を婚約者だと思ったことはない!」

なんてこと言うんだよ。本当にこんなのが王太子で大丈夫か、王家。いやだめだと思う。王妃様が歳を召されてからの子供だったせいか、殿下はかなりわがままにお育ちになった。昔はこんな性格もお可愛らしいと思ったが、いや違う。行き過ぎたわがままは単なる愚図だ。

「まあ、王家と公爵家で結ばれた婚約はなかったものだと仰りますの?我が公爵家も見くびられたものですわ」

「ち、違うんです。お姉様………!お願い、話を聞いて」

ここでずっと王太子の背中に隠れていた義妹、ミレーヌが顔を出した。金髪のくせっ毛を緩く2つで結んだ可愛らしい顔立ちの少女である。少々お転婆が過ぎているが、それはミレーヌらしいと見逃されている。

私は義妹が嫌いだった。生まれてから何もかも、義妹に奪われてきた。両親の愛情も、名誉も、幸福感も。逆に私に与えられたのは孤独感と寂しさと、そしてやるせなさ。幼少の頃から刷り込まれたそれはなかなか消えず、つい最近まで私を蝕んでいた。

本当に、今思えばなんでこんなのにかかずらっていたのかしら…………。

こんなことになる前にもっと早くに目を覚ましたかったものだわ、と内心私は毒づいた。

「あなたに聞いてないわ、ミレーヌ。そもそもこの場になぜあなたがいるの」

今日は王太子とのお茶会の日だった。

お茶会という名目の元、以前王太子に申し立てられた婚約破棄について話し合いをする場だったのだ。それなのになぜ部外者の義妹がいるのか。

そういった目で彼女を見れば、ミレーヌはまたしても怯えたように後ろに隠れた。愛らしいミレーヌ。彼女は今までこんな目で見られたことなどなかったのだろう。

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