今さら本物の聖女といわれてももう遅い!妹に全てを奪われたので、隣国で自由に生きます
「お、お姉様………私………」

「聞いていれば、口がすぎるぞ!お前はたかだか公爵令嬢で、俺はこの国の王太子だ。立場というものを弁えろ!」

いや、それをあなたが言うのか。

本来であれば婚約者をエスコートしなければならない夜会で恋人を連れて現れたり、私をいないものとして扱ったあなたが。私の婚約者という立場を忘れて振舞ったご自分への皮肉かしら。

「そうですわね………。流石に言いすぎました。申し訳ございません」

「はっ、今更か。今更謝ってももう遅いーーー」

「本来の聖女である私も、殿下から見たらただの貴族の娘ですものね。王家の直系たる殿下にとんだ口の聞き方をしたこと、謝罪致しますわ」



務めて殊勝な声で、そして表情を取り繕って言うと、王太子はぽかんとした顔をした。いや、本当に私なんでこんなのが好きだったの………?表情がそのまま直結する王太子って、本当どうなのよ。王妃様も国王陛下も一人息子で歳を召されてからの子供であったとしても、あまりにも教養が足りないんじゃないかしら。少なくともこの王太子が玉座についた日にはセイフェルーン国は滅びるんじゃないかしら。そう思うと、早いうちに婚約破棄しておいて良かったのかもしれないと私は思う。夫婦共倒れならぬ国を巻き込んで斃れるなんてごめんである。倒れるのは殿下ひとりで十分だ。

そんなことを考えていると、ミレーヌが弾けるように言った。

「本当の聖女…………!?何を言ってるんですか、お姉様!」

自分こそが聖女だと言われていた義妹は信じられないものを見るような目で私を見た。

そうよね。あなたも知らないわよね。このことを知っているのは、私とーーーそして、私の両親だけだもの。
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