今さら本物の聖女といわれてももう遅い!妹に全てを奪われたので、隣国で自由に生きます

聖女と呼ばれる所縁 ②

公爵は私を見ると忌々しそうな顔をした。

この日私は父と呼ばれる人と二回目の顔合わせをした。ひっくり返された食事トレーが目に入り、ああ、今日のご飯なくなっちゃったな、どうしよう、と考えながらもそれを上回る衝撃に私はただ息を飲むしかなかった。

この時、私の食事は既に悪辣な環境となっていて一日一食しか出てこなかったのだ。それも、侍女の夜食用と思われるそれを。そんな生活を続けていたものだから私の発育はかなり悪かった。子供ながらに栄養失調だとすぐに気づかれる見た目だ。

「全く………気味の悪い。お前なんか居なければよかったのに」

「ーーー」

子供ながらに、その言葉は深く私の胸を抉った。それは確実に私に影響をもたらしたものだったのだろう。公爵は私を見て、そしてまた大仰にため息をつく。

「この役立たずが。面倒事ばかり運びやがって。さすがあの女の娘だな。そういうところはよく似ている」

「…………」

「しかも、口が聞けないのか?とんだ愚図だな。愚図でのろまで愚かとは、救いようのない。全く、お前は生きてる価値などないな」

公爵は私を見ながら、ソファに座った。テーブルの下に落ちた食事は侍女が静かに片付けていた。公爵は私を睨むように見る。その瞳からは慈愛とか、親愛とか、そんなものはとてもではないが感じられなかった。感じられるのは侮蔑、軽蔑、嫌悪。酷く敵対視されているのがよく分かった。

「ーーーお前が聖女として選ばれた」

「…………ぇ」

小さく言葉にできたのはそれだけだった。しかし公爵は煩わしそうに手を振る。話すな、ということだろうか。
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