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丹野くんが笑った。
「っ…ごめん、いや、部員とか怪我したら普通にやるから」
「ねえ笑ってるじゃん、鼻栓入って思ったより変な顔してんでしょ私」
どうやらホントに可笑しな顔をしているらしい。
丹野くんは堪えながら笑っている。
なんだろう、ちょっと悔しいのと恥ずかしいので今すぐ鼻栓吹き飛ばしたいのに、全然嫌じゃない。
「…あ、やべ」
時計を見て我に返った丹野くんは、またいつものようだった。
棚から出したものを素早く戻して、「何かあったら言って」と私の鼻を気遣って保健室を出ていった。
キュッキュッとシューズが鳴らす音が小さくなっていくと同時に、今の空間がなんだか夢の世界だったように感じる。
確かに残ったのは、鼻栓と血まみれのタオル。
…それと、多分、ワクワクしてる自分。