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「それ何?」
学校に着き、教室に向かいながら手に持っている紙袋に視線を向けてそんなことを聞いてきた。
丹野くんへのタオルのお返しだ。
さすがに血まみれ使用済みではない、ちゃんとお店で買ってきた。
「あー、クラスの子に」
まだ友達と言える程の関係じゃないよな、なんて思った。
…まだって何だと思った。
ふーん、と相槌を打った夏稀は、後ろから来たサッカー部の仲間数人に突如拉致られる。
「夏稀い、お前古典やった?」
「やってねえっしょ?な?」
「こいつ今日当てられんのにやってないんだって」
ガハハッと笑って軽くバカにして、朝から元気な夏稀の周りは流れるように私の隣を過ぎていく。
夏稀はどこにいても空気清浄機の様な存在らしい。