愛され、溶かされ、壊される
*****竜 side*****
「福井くん。これコピー」
「あぁ、ありがとう」
「……」
「…何?」
「福井くんって、濱野さんと付き合ってるの?」
「うん、そうだよ」
「そう…なん、だ…」
「で?」
「え?」
「だから、何?」

それまでずっと持ってきてくれた書類を、見ていたのだが、嫌そうに顔を彼女に向けた。
正直、葵以外とは出来る限り話をしたくない。もっと言えば、顔も見たくない。

「////」
どうやら俺は、見るだけで相手の顔を真っ赤にできるみたいだ。

でも…………

全然だ。
全く可愛くない。
これがもし葵だったら、このまま誰もいない部屋に連れていき、キスをするだろう。

「何もないなら、あっち行ってくれる?仕事の邪魔だから」
「え?あ、ごめんなさい」
そそくさと小走りで行った。
「はぁー」

「竜くん」
「え?あおちゃん?どうした?」
さっきまでの表情とは正反対の、満面の笑みを浮かべる。
葵と少しでも話すと、それだけで心が躍る。
「これ、加那ちゃんが頼まれてた資料。加那ちゃんちょっと他の仕事で忙しいから」
「ありがとう!わざわざごめんね!」
「ううん。こっちこそ忙しい時に……」
「どうして?」
「さっき高島さんと話してる時、あっち行ってって言ってたから」

聞いてたのか――――

「ううん。あおちゃんなら、いつでも大歓迎だよ!あおちゃんは見えなかっただろうけど、高島さん邪魔しようとしてたんだよ。だからちょっときつい言い方しちゃった」
「あ、そうだったんだ。よかった。私も怒られるのかなって思ってたから」
「そんなこと、有り得ないよ」

高島さんとは、先程の女で高島 美南(みな)と言って同期の女だ。
コイツが一番、葵を傷付けていた。
無意味に仕事を押しつけたり、失敗を擦り付けたり。

今思い出しても、腹が立つ。
忠告はしたのだが、まだ忠告必要だな。

*****竜 side・終*****
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