愛され、溶かされ、壊される
テーブルの上の書類が、床に散らばる。
「あ、あの、ごめんなさい……」
急いで簡単に拾い上げ、テーブルに置く。
「すみません。お手伝い行ってきます…」
そう一言告げ、その場を去った。




バン――――
ガチャン―――――
「はぁはぁはぁはぁ……怖かった……」
トイレの個室に入り、鍵をかける。

身体が震えて止まらない。

「助けて……竜くん…」


「あおちゃん!!」
「え……」
「あおちゃん!いるんでしょ?竜だよ!出てきて!」
竜くん――――――?
ガチャン―――
バン―――――

「竜くん!!!」
私は急ぎ個室を出てトイレの外に向かい、女子トイレの前にいた竜くんに抱きついた。
「あおちゃん!大丈夫?三井に何かされたの?」
「竜くん……」
震えが止まらず、必死で竜くんにしがみついた。
竜くんは背中を擦ってくれている。
「大丈夫だよ…!僕がいるよ……大丈夫……」

少し落ち着くと―――
「あおちゃん?話して!ゆっくりでいいから…」
一度深呼吸して答える。
「三井さんに……手を、握られて……その後に、その、首……触れた…の…」
「手と首?そう…なんだ…。
へぇーあれだけ言ったのに―――」
「ごめんなさい…竜くん。手を握られた時、すぐに振り払えなくて、でも首はさすがに怖くて突き飛ばしちゃったの……ごめんなさい…」
「あおちゃんが謝る必要ないでしょ?悪いのはアイツだよ!大丈夫……僕に任せて…」
「竜…くん…?」

その時の竜くんは、今まで見た私の知ってる竜くんではなかった。
言葉で表現できない、恐ろしい怖さがあった。

でもこれはまだ序章に過ぎない。
竜くんの怖さはこんなものではないのだ。
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