元書店員ですが、転生したら貴族令嬢になっていました!
10. 兄との初対面!
翌朝、またしても早く目が覚めた。
もう寝れないならそれでいいとばかりに、部屋にあった裁縫箱をあけて(裁縫とか刺繍は貴族令嬢の嗜みのひとつとかで部屋に立派な道具箱があった)、ウォークインクローゼットに所狭しとかけられているドレスのフリルを丁寧に取る作業を始めた。昨日の時点でどのドレスがそんなに高価ではないのかをティナさんに聞いておいたので、安いやつ。そんでもって地味なやつ。
舞踏会に来ていくドレスは、外だからフリルがどれだけあってもいいけど、家にいる時はみんな私がアリアナでなくてもいいわけで、それであったらシンプルな服でよい。本当はTシャツとズボンでいい。けれどさすがにそこまでは許されないのは分かっているので、せめてフリルくらいはとらせてくれぃ。
それからしばらくしてやってきたティナさんは大量に積まれているフリルをみて、目を白黒させていたが、黙ってフリスが少なくなったドレスの着付けを手伝ってくれた。
侯爵の宣言通り、イリーナのざます攻撃(彼女もシンプルすぎるドレスを見て何か言いたげだったが記憶喪失ということでお小言を言うのは我慢したみたい)、ジェイミー先生のおっとり攻撃に合わせて、ピアノとダンスのレッスンが始まることになった。ピアノの先生はイリーナの妹だというフランチェスカという女性でやっぱりざます攻撃だった。しかし現実世界でもピアノは習っていた時期があったので、比較的叱られなくて済むのが救い。弾かされる曲は勿論全然知らないものの、楽譜は同じように読める(謎の力が働いているかまでは分からない)のでそこまで苦労しない。上手かどうかは関係がない、要は弾けるか弾けないか、である。
ダンスの先生はアリアナの3歳上の兄―エリックであった。
侯爵によると、エリックとアリアナは本当の兄弟ではないそうで、あんなに奥様とは恋愛だ恋愛結婚だと言っていた侯爵も所詮ただの男でまさかの不義の子なのか……と一瞬思ったがそうではなく、男子の跡取りに恵まれなかった侯爵家が、不幸があった遠縁の子を嫡男として引き取ったという話であった。遠縁の子なので血はつながっているようだが、家系図によると、かなり血は薄い感じだった。文字通り遠縁。そしてこの国の貴族の世界では、家を存続するためによくあるんですって。
エリックはとても優秀で、家督は彼が背負っていくとのことだったのでめっちゃくちゃ安心した。現在貴族令嬢レベルひよこ以下の私は、彼が嫁を娶ってこの家に戻ってくる前に、一人で舞踏会に出れるくらいにはなっておかないといけないなぁ。この世界で自分が結婚して家庭を持つとは考えられないが、とりあえず他人に迷惑をかけないで生きられるレベルにはなっておきたい。
侯爵は悩んだ挙句、エリックに本当のことを話すと言っていた。曰く、アリアナだけど前のアリアナではない、という主旨の。信じられないかもしれないが自分で確かめてみろ、と言われたであろう彼が、王宮から戻ったその足でダンスのレッスンにやってきた。
私は既に疲労で魂が半分抜けていた。
これからダンスのレッスンなんて……うう、ヒールを履いて踊るなんて…
と、ちょっと肩を落として、大広間の窓から夕焼けを見ていた。でもまぁ、やるしかない。
「わぁ、君、本当にアリアナじゃないんだね」
後ろから快活な声がして、私は振り向いた。
短めの薄い茶色の髪、瞳は青色。確かに侯爵には似ていない――けれど十分色男ではあるが――細身の青年がそこに立っていた。兄のエリックだろう。
「アリアナがそんなドレス着るわけないもんねぇ」
もう寝れないならそれでいいとばかりに、部屋にあった裁縫箱をあけて(裁縫とか刺繍は貴族令嬢の嗜みのひとつとかで部屋に立派な道具箱があった)、ウォークインクローゼットに所狭しとかけられているドレスのフリルを丁寧に取る作業を始めた。昨日の時点でどのドレスがそんなに高価ではないのかをティナさんに聞いておいたので、安いやつ。そんでもって地味なやつ。
舞踏会に来ていくドレスは、外だからフリルがどれだけあってもいいけど、家にいる時はみんな私がアリアナでなくてもいいわけで、それであったらシンプルな服でよい。本当はTシャツとズボンでいい。けれどさすがにそこまでは許されないのは分かっているので、せめてフリルくらいはとらせてくれぃ。
それからしばらくしてやってきたティナさんは大量に積まれているフリルをみて、目を白黒させていたが、黙ってフリスが少なくなったドレスの着付けを手伝ってくれた。
侯爵の宣言通り、イリーナのざます攻撃(彼女もシンプルすぎるドレスを見て何か言いたげだったが記憶喪失ということでお小言を言うのは我慢したみたい)、ジェイミー先生のおっとり攻撃に合わせて、ピアノとダンスのレッスンが始まることになった。ピアノの先生はイリーナの妹だというフランチェスカという女性でやっぱりざます攻撃だった。しかし現実世界でもピアノは習っていた時期があったので、比較的叱られなくて済むのが救い。弾かされる曲は勿論全然知らないものの、楽譜は同じように読める(謎の力が働いているかまでは分からない)のでそこまで苦労しない。上手かどうかは関係がない、要は弾けるか弾けないか、である。
ダンスの先生はアリアナの3歳上の兄―エリックであった。
侯爵によると、エリックとアリアナは本当の兄弟ではないそうで、あんなに奥様とは恋愛だ恋愛結婚だと言っていた侯爵も所詮ただの男でまさかの不義の子なのか……と一瞬思ったがそうではなく、男子の跡取りに恵まれなかった侯爵家が、不幸があった遠縁の子を嫡男として引き取ったという話であった。遠縁の子なので血はつながっているようだが、家系図によると、かなり血は薄い感じだった。文字通り遠縁。そしてこの国の貴族の世界では、家を存続するためによくあるんですって。
エリックはとても優秀で、家督は彼が背負っていくとのことだったのでめっちゃくちゃ安心した。現在貴族令嬢レベルひよこ以下の私は、彼が嫁を娶ってこの家に戻ってくる前に、一人で舞踏会に出れるくらいにはなっておかないといけないなぁ。この世界で自分が結婚して家庭を持つとは考えられないが、とりあえず他人に迷惑をかけないで生きられるレベルにはなっておきたい。
侯爵は悩んだ挙句、エリックに本当のことを話すと言っていた。曰く、アリアナだけど前のアリアナではない、という主旨の。信じられないかもしれないが自分で確かめてみろ、と言われたであろう彼が、王宮から戻ったその足でダンスのレッスンにやってきた。
私は既に疲労で魂が半分抜けていた。
これからダンスのレッスンなんて……うう、ヒールを履いて踊るなんて…
と、ちょっと肩を落として、大広間の窓から夕焼けを見ていた。でもまぁ、やるしかない。
「わぁ、君、本当にアリアナじゃないんだね」
後ろから快活な声がして、私は振り向いた。
短めの薄い茶色の髪、瞳は青色。確かに侯爵には似ていない――けれど十分色男ではあるが――細身の青年がそこに立っていた。兄のエリックだろう。
「アリアナがそんなドレス着るわけないもんねぇ」